事業所得と雑所得の判断基準は?

近年では働き方の多様化により、給与収入を得ながら副業収入のある方も多いと思います。
副業は事業として行うものであれば事業所得、事業として行うものでなければ雑所得となり、実際は雑所得に該当するケースが多いように思います。ただ所得税法上、事業についての定義はなく、営利性・継続性・独立性の観点から事業かどうかの判断をすることとなり、悩ましい論点でもありました。
その結果、事業規模でないにもかかわらず、確定申告の際に副業を事業所得として申告し節税をするというケースが散見されたために、令和4年分以後の申告の際にはその副業が事業所得なのか雑所得なのかの判定基準として、その副業収入が300万円以下の場合には雑所得(業務に係る雑所得)に該当すると通達により明確化されました。

事業所得と雑所得のどちらの所得で確定申告しても、税額にインパクトは無いと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、計算上は事業所得として申告した方が税額は少なくなります
その理由は、事業所得の場合青色申告特別控除を適用できること、損失がある場合には給与所得等他の所得と損益通算できることが挙げられます。
雑所得はこれらが出来ないため、所得の区分によって税額も変わってくるということになります。

事業所得と雑所得は、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかが判定の原則です。ただし今回の改正でその事業規模の判定に迷う場合、主たる所得でなく、かつその所得に係る収入が300万円を超えない場合には反証のない限り雑所得に該当することとなります。
反証のない限りとは、例えばこれまで事業所得で申告していたものの、コロナの影響等の理由により収入が減少し300万円以下となった場合は事業所得のままとなりますし、収入が300万円超であっても判定の原則である事業規模に満たない場合には雑所得となります。

副業のある方は、その収入が事業所得なのか雑所得なのかをまずはしっかり把握するようにしましょう。

追記
記事を更新後の10月7日に国税庁から副業収入等についての所得税法基本通達の公表がありましたので追記します。
上記の300万円の基準に対して国税庁へ納税者から多くの意見が寄せられた経緯もあり、その内容が削除され、その所得に係る取引を記録した帳簿の保存がある場合には、概ね事業所得に該当するとされました。
ただしあくまで事業所得に該当するかは社会通念上での判定が原則となり、帳簿の保存がある場合でも営利性(毎年赤字になっている等)が認められない場合等には雑所得となります。