4月の記事で取り上げた「賃上げ促進税制」について、中小企業庁のホームページにガイドブック及びQ&Aが更新されましたので、更新内容を中心にさらに深掘りしていきたいと思います。
制度の概要は前回ご説明の通り、雇用者給与等支給額を前年度より増加させた場合には法人税又は所得税の税額控除を受けられるというもので、これまでの旧制度に比べ税額控除率の上乗せ要件を簡素化しさらに控除率を最大40%まで引き上げるというものです。
その他に教育訓練費増加要件の明細書をこれまでの添付義務から保存義務へ変更、及びこれまでの経営力向上要件は廃止となりました。
では細かい点を見ていきましょう。
まず給与等の範囲ですが、給料・賃金の他に賞与、諸手当、非課税とされる通勤手当も含みます。ただし退職金は含みません。また雇用者の給与ですので、役員報酬(個人事業主の場合は専従者給与)も含まれません。給与所得となるものがその範囲となります。
上記の給与等のうち、適用年度の所得の金額の計算上損金の額に算入された額となりますので、未払給与も損金に算入されるため含まれ、逆に前払給与は損金に算入されないために含まれません。
さらに、給与等に充てられるために支払を受けた助成金(業務改善助成金、雇用調整助成金等)は要件の判定の際には控除して計算しますが、雇用安定助成金額は控除しません。(ただし実際に税額控除額を計算する際には雇用安定助成金額も控除して計算します。)
この控除するものとしないものがある助成金の取扱いに注意が必要となります。
次に教育訓練費の範囲です。外部講師への謝金、外部施設等使用料、研修委託費、外部研修参加費がその範囲とされ、自社の役員や従業員が講師となった場合や自社の施設を利用した場合の光熱費等は含まれません。外部に支払うという点がポイントになってきます。
この制度の適用は、白色申告書の提出者や新規設立で前事業年度がない場合には適用できません。
実際の計算は税理士が行うケースがほとんどだと思いますが、給与が前年度より増加している場合には税額控除を受けられる制度があるということをどこか念頭に置いていただければ幸いです。