お客様から寄せられる相続についてのご相談でたまたま同じ内容のものがありましたので、今回は情報共有として表題の通り老人ホームに入居した場合の小規模宅地等の特例の適用について取り上げたいと思います。
まずは「小規模宅地等の特例」とは何かという話ですが、被相続人(亡くなった方)が住んでいた自宅の土地を相続する際にその土地の相続税評価額を最大80%下げることが出来る特例です。
相続した家族が相続税を支払うために生活の基盤となる土地を売却しなくても良いようにと設けられています。
被相続人がこれまで住んでいた土地を対象としていますので、親が自宅に一人で住んでおり、その後老人ホームに入居することになった場合にはその自宅は空き家となってしまいます。(税務上は住民票の異動の有無にかかわらず、入居後は老人ホームが自宅という取り扱いになります。)空き家であれば住んでいるという要件を満たさないため、その自宅の土地を相続する場合には小規模宅地等の特例を使えなくなるのではという疑義が生じます。
以前は特例が使えませんでしたが、税制改正により平成26年以降は一定の要件を満たせば老人ホームに入居していても小規模宅地等の特例を使えるようになりました。
その適用要件として、まず要介護認定・要支援の認定を受けていることが必要です。これは老人ホームに入居した時点ではまだ受けていなくても、入居後から相続発生のタイミングで認定を受けていればその要件を満たします。
次に空き家となった自宅を賃貸していないこと、この2つを満たせば特例を使えるようになります。
さらに追加でご相談を受けたのが、息子さんは現在賃貸住宅に居住しており実家であるご自宅を空き家のままにしておくのも物騒なので、空き家となった自宅へ引っ越しを検討しているが今後の相続に際して問題は無いかという内容でした。
相続が発生した際に親族が自宅を売却することなく引き続き住めるようにということで設けられた特例ですので何ら問題ないように考えがちですが、親が老人ホームに入居後に空き家の実家へ住む場合には小規模宅地等の特例は適用出来なくなります。これまで別居していたのであれば親と生計を一にしているとは見なされないためです。(親に生活費を渡していたなどの要件があれば認められる可能性はありますがそのハードルは高いと思います。)
逆にこれまで通り賃貸住宅に居住したままであれば「家なき子の特例」という制度があるため小規模宅地等の特例の適用が可能です。
相続税のことを考えれば実家を空き家のままにしなければならないのも心情としてはどうにかならないのかと思いますが、現状はそのような制度になっており誤解が生じやすい論点ですのでご注意下さい。