インボイスでのクレジットカード明細書の取扱い

今年の10月でインボイス制度が始まって丁度1年が経過しました。
これまでインボイスについてクライアントから様々なご質問を頂戴しましたが、領収書ではなくクレジットカード利用明細書の保存で仕入税額控除(消費税を計算する上で支払った消費税として預かった消費税から控除すること)が可能かという問い合わせが多かったように思います。
今回はこの点をピックアップしていきます。

結論から先に申し上げますと、クレジットカードの利用明細書はインボイスに該当しないため仕入税額控除が出来ません
クレジット会社がそのカード利用者に対して作成する利用明細書は、実際に利用した店舗が作成し交付する書類ではなく、その店舗の登録番号が記載された書類でもないため、消費税法に規定する「請求書等」には該当しません。(消費税法では仕入税額控除の適用を受けるためには「帳簿」及び「請求書等」の保存が要件とされています。)
従って利用明細書のみを保存してもそのカード利用代金の仕入税額控除の適用は受けることが出来ないという事になります。ちなみにこれはインボイス導入前でも同様でした。
カード決済をした店舗から受領した領収書等を保存することが必要となります。

しかしながら特例として利用明細書の保存で仕入税額控除をすることが出来る取引があります

具体的に紹介すると、まずは「少額特例」です。税込1万円未満の取引であればインボイスは不要とされています。基準期間における課税売上高が1億円以下であること等が要件で、令和11年9月30日までの期間が対象となっています。
次に「公共交通機関特例」です。電車・バス等の公共交通機関の利用で1回の取引金額が3万円未満の取引であればインボイスは不要とされています。1回の取引金額ですので、切符1枚ごとで金額を判断しない点及びタクシーはこの特例に含まれない点ご注意下さい。
また「出張旅費等特例」もインボイスが不要とされています。従業員に支給する出張旅費(宿泊費や日当を含む)のうち、その旅行に通常必要であると認められる金額を言います。旅費に係る社内規定の有無、概算払いか実費精算かに関わらず通常必要であると認められる部分はこの特例の対象です。
これらのインボイスが不要で仕入税額控除が可能となる特例対象の取引については、クレジットカードの利用明細書の保存のみで仕入税額控除が出来ることになっております。

インボイス導入により消費税の経理処理が以前に比べてだいぶ面倒になりました。
仕入税額控除の際は基本的に領収書等のインボイスは必要ですが、事務処理の煩雑さを考慮してこれらの特例もありますので上手に活用していただきたいと思います。