法人税の令和6年度税制改正

令和6年が始まりました。
まずは、能登半島地震で被災された方に心よりお見舞い申し上げます。
まだ復興と言う言葉さえも憚られる状況ですが、少しずつ希望の灯がともるようにと願っております。

昨年はコロナが5類感染症となったことで人流も戻り、経済も再び動き出した1年でした。
円安による物価高の懸念もありますが、年明け後も株価がバブル崩壊後最高値を更新するなど回復に向かっている印象を受けています。

今回も引き続き令和6年度税制改正について取り上げて行きたいと思います。
前月は所得課税でしたので、今月は法人課税について解説していきます。

令和6年度税制改正では、賃上げ促進税制について大幅な見直しがありましたのでこの税制に絞って見て行きましょう。

賃上げ税制は法人の規模により3つに分類され、それぞれ控除率も異なります。
①大企業向け(「資本金10億円以上かつ従業員数1,000人以上」又は「従業員数2,000人超)
原則の控除率を15%から10%に引き下げ、継続雇用者給与等支給額の対前年比の増加割合が4%以上の場合は「控除率5%上乗せ」、5%以上の場合は「控除率10%上乗せ」、7%以上の場合は「控除率15%上乗せ」とします。
また教育訓練費の増加割合が10%以上かつ教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合には「控除率5%上乗せ」となり、さらにプラチナくるみん認定かプラチナえるぼし認定(厚生労働省による子育てサポート等の認定制度)があれば「控除率5%上乗せ」となります。従って控除率は最大で原則10%+上乗せ(15%+5%+5%)=35%になります。
②中堅企業向け(資本金1億円以上で従業員数2,000人以下)
原則の控除率は10%とし、継続雇用者給与等支給額の対前年比の増加割合が4%以上の場合で「控除率15%上乗せ」となります。(4%以上は控除率が一律で、大企業向けのようなインセンティブは無し)それ以外の教育訓練費やプラチナくるみん認定等の上乗せ要件は①の大企業向けと同様となります。(従って①同様に控除率は最大で35%)
③中小企業者向け(資本金1億円以下又は従業員数1,000人以下)
原則の控除率は15%のままで、雇用者給与等支給額の対前年比の増加割合が2.5%以上の場合で「控除率15%上乗せ」となります。さらに教育訓練費の増加割合が5%以上かつ教育訓練費が雇用者給与等支給額の0.05%以上の場合にも「控除率10%上乗せ」となります。プラチナくるみん認定等の上乗せ要件は①及び②と同様です。従って控除率は最大で原則15%+上乗せ(15%+10%+5%)=45%になります。さらに5年間の繰越税額控除制度も創設されました。これにより赤字の企業であっても翌期以降に税額が発生する場合には、賃上げ税制の恩恵を受けられる形になりました。

国としても賃上げ実現の環境を後押しするような税制となっています。